カリフォルニアに新幹線?SFとLAを結ぶ計画とは

こんにちは。

アメリカで土木エンジニアとして働いている光太郎です。

今回は、アメリカの土木系で話題の尽きないカリフォルニア高速鉄道を取り上げてみます。

日本には新幹線があり、ドイツにもイギリスにもある高速鉄道。
近年の急速な発展により中国にもすでに高速鉄道は整備されています。

カリフォルニアで2008年から動き始めたカリフォルニア高速鉄道プロジェクトですが、2020年の開業目標だったにも関わらず、2025年現在、その半分もできていない状態です。

CHSRAから転用)

今回は、カリフォルニア高速鉄道のこれまでの動向と今後の展望を見ていきましょう。

カリフォルニアに高速鉄道?

プロジェクトが動き出したのは2008年。

当時のカリフォルニアは以下の3点を主な理由として、高速鉄道の需要が高まったとされています。

  • 車社会からの脱却
  • 先進的な環境政策
  • 経済不安からの大規模公共事業への期待

それぞれを少しずつだけ見ていきましょう。

まず1つ目の車社会からの脱却、に関してですが、当時のカリフォルニアでは、「過度な車社会によるインフラの機能低下」が深刻な問題となっていました。これは特にロサンゼルス都市圏で顕著で、車中心の生活様式が前提となった都市構造により、街は縦ではなく横へ横へと拡大していきました。

その結果、通勤・通学・物流のほぼすべてを自動車に依存する状況が生まれ、慢性的な渋滞、移動時間の増大、インフラ維持コストの増加といった問題が顕在化していったのです。

こうした背景から、「車以外の大量輸送手段」を州全体で整備する必要性が強く意識されるようになりました。特に、ロサンゼルスとサンフランシスコという二大都市圏を結ぶ移動は、飛行機か長時間の車移動に限られており、その中間に位置する地域を含めた新たな交通軸の構築が求められていました。

2つ目の環境政策ですが、当時から現在に至るまで、カリフォルニア州は全米の中でも環境政策において先進的な立場を取ってきました。温室効果ガス削減や脱炭素を重視する州の方針と、電気で大量輸送が可能な高速鉄道は非常に相性が良く、環境負荷の小さい次世代インフラとして大きな期待を集めました。航空機や自動車に比べ、エネルギー効率が高い点も、高速鉄道が魅力的に映った理由の一つです。

そして最後に、プロジェクト推進の大きな追い風となったのが、2008年のリーマンショックでした。景気後退により失業率が急上昇する中で、大規模な公共投資による雇用創出が強く求められていたのです。高速鉄道プロジェクトは、建設業を中心に長期的な雇用を生み出し、経済を下支えする「景気刺激策」としても位置づけられました。

カリフォルニア高速鉄道の主な概要

カリフォルニア高速鉄道は、サンフランシスコとロサンゼルスを結ぶルートで計画されています。

Wikipediaから転用)

距離感がわかりにくいと思うので、カリフォルニアと日本の地図を重ねてみました。

Thesuresizeを使用)

おおよそ、サンフランシスコーロサンゼルス間は青森ー東京間の直線距離と同じ距離だということがわかると思います。

この、サンフランシスコーロサンゼルス間を2時間40分で結ぼうというのが、カリフォルニア高速鉄道の大きな計画目標のひとつです。一見、そこまで難しいプロジェクトだとは思えませんが、次のセクションで、このプロジェクトが抱えている問題を見ていきましょう。

カリフォルニア高速鉄道が直面している問題

さて、そんな背景から始まったカリフォルニア高速鉄道ですが、冒頭に書いたように計画通りに進んでいません。そこには、技術的な課題以上に、アメリカ特有の「政治・法律・構造」という3つの厚い壁がありました。

政治的妥協が生んだ「遠回りなルート」

最も象徴的なのがルート選定です。本来、最速を目指すなら高速道路(I-5)沿いの直線ルートが合理的でした。しかし、建設許可や政治的支援を得るために、各地の自治体の要望を汲み取る必要がありました。 例えば、ロサンゼルス近郊では、地元の強い要望により東側のパームデール(Palmdale)を経由するルートに変更されました。

この「寄り道」だけで、路線は約55km(34マイル)も長くなり、所要時間は12分増加することになったのです。こうした各地での「小さな妥協」の積み重ねが、建設費の増大と速度低下を招くという皮肉な結果を生んでいます。

訴訟の乱発を許す法的スキーム

アメリカ、特にカリフォルニアでは、環境保護のための法律「CEQA(カリフォルニア環境品質法)」が非常に強力です。本来は環境を守るためのこの法律が、プロジェクトに反対する住民や団体による「差し止め訴訟」の武器として使われました。 農地の分断を懸念する農家や、自宅近くを通ることに反対する住民グループなどによる訴訟が相次ぎ、そのたびに工事はストップし、膨大な弁護士費用と工期の遅延が積み重なっていきました。

いかにもアメリカらしいといえばそれまでなのですが、本来盾として何かを守るべきはずの法律が、矛としてこのプロジェクトには働いています。

経験不足と「コンサル依存」

日本やフランスなど、すでに高速鉄道網を持つ国とは違い、アメリカにはこうした巨大鉄道プロジェクトを自前で管理・設計できるエンジニア集団が政府内に育っていません。 そのため、当局は設計や管理の大部分を外部のコンサルタントに依存せざるを得ませんでした。結果として、内製する場合に比べて人件費が数倍に膨れ上がり、プロジェクトの管理自体も複雑化するという構造的な問題を抱えることになったのです。

今後の展望

現在、最も注力されているのが、マーセド(Merced)からベーカーズフィールド(Bakersfield)までの約275km(171マイル)の区間です。一度にサンフランシスコーロサンゼルス間を開通させるのではなく、まずは一部区間だけオープンしようというのが現在の大きな流れです。この区間は2033年までに開業を目指しているとのことです。

タイトルとURLをコピーしました